成人式のときに、着物を着たまま似顔絵を描いてもらいました。普段は遠くに住んでいる祖母が、記念にと欲しがったためです。

母は写真でいいのではないかということを言っていたのですが、祖母は似顔絵師の方の絵のタッチが気に入ってしまったようで。私は別にお金を払うわけでもないし、おばあちゃんがそれほどまで言うのならと賛成しました。

似顔絵というとじっとしていなければならないという印象があったのですが、似顔絵師さんは会話をしたがりました。そのほうが表情豊かに仕上げられるのだと聞いて、成る程なと思いましたね。

私の位置からはよく描いている途中の絵が見えなかったので、関心がそれることなくずっと前を向いて話していられました。いつの間にか母と祖母はどこかに行っていましたが、かえって気楽だったように思います。

絵師さんの筆の進みは速く、最後の方では母親と祖母が帰ってこないことの方が心配でした。完成したのにいつまでも絵を受け取らないでいるのは悪いですし、とりあえずお金を払っておくべきだろうかとも感じましたね。絵師さんは、待たせるよりは待つほうがずっといいから大丈夫だといっていましたが。

結局母達は何とか間に合い、完成した絵をみんなで見て大喜びしました。その絵はとても生き生きとして、でも私の特徴を捉えていてよく似ていて、祖母はとても気に入ってチップもつけてお金を支払っていました。

今も祖母の家に行くと、あの日の私が笑って迎えてくれます。